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同人小説をWordで快適に書くための設定を詳しく解説!

同人小説をWordで快適に書くための設定を詳しく解説!

小説メインの同人誌を作ろう!と思い立ったとき、イメージするのは文庫タイプの同人誌ではないでしょうか?

「Wordを使えば、同人小説の原稿なんてカンタンそうな気がする」

そう思いがちですが、文庫のレイアウトに合わせて小説の原稿を書き上げるためには、通常の書類作成ではあまり使わないようなWordの機能も実際は多用することになります。

書式やページの設定をどうすればいいのか、日頃からWordをよく使っている人であってもいざ同人小説を書こうとすると操作に迷うことが多いのです。

一度マスターしてしまえばWordの設定はほとんどの印刷会社で共通したフォーマットなので、ぜひ操作方法を覚えたいですよね。

同人小説で本を初めて出す初心者でもラクチンなWord設定の方法をスクリーンショット画像と合わせて解説します!

※今回の解説ではWord2010を用いています。解説通りの操作が出来ない場合はWordのバージョンをご確認下さい※



同人小説を書くためのWord設定:自分用のテンプレートを作ろう

同人小説を書くためのWord設定:自分用のテンプレートを作ろう 文庫用の小説原稿を仕上げるためには、まず用紙の設定からスタートしましょう。

最初の設定をきちんとしておくだけで、同人誌の出来上がりをぐっと本格的な見た目に仕上げることが出来ます。

ぜひ見本となる商業誌や同人誌を片手に、自分の同人小説向けのWord設定を試してみてくださいね。

用紙サイズと余白を決めよう

文庫サイズで同人小説の本を作る場合、Wordの用紙サイズから設定することになります。

文庫サイズの場合はA6の105×148cmが基本となります。Word2010の場合、既定の用紙サイズのなかにA6があるのでそのまま設定すれば大丈夫です。

ただし、ページに飾り枠をつけるなどの装飾をする際は断ち切り分の余白を考えてサイズを変更する必要があります。

断ち切りが必要なデザインの場合、Wordの用紙サイズはA6サイズに+6mmのサイズで設定しましょう。

操作方法としてはWordで白紙の文章を選択した後、レイアウトタブから「サイズ」をクリック。一番下にある「その他の用紙サイズ」を選んで111×154cmを入力すれば出来上がりです。 その他の用紙サイズを選んで 111×154cmを入力

ページサイズが決まったら、次に余白を調整です。レイアウトタブから「余白」を選んで「ユーザー設定の余白」を選択するか、ページ設定の右下のボタンをクリックするかのどちらかで余白の調整ウィンドウを開くことができます。 余白の調整ウィンドウ

目安としては、10m~15mm程度で上下左右の余白を決めるのが一般的です。好みに合わせて、数ミリの範囲で調整を加えることになります。

ちなみに、小説系の同人誌印刷を多数手掛けるしまや出版のテンプレートでは上下左右の余白がどれも15mmに設定されていました。 余白を15mmで設定した場合

ページ数が多くなるほど、余白が多めの方が読みやすくなります。好みのWordレイアウトをぜひ研究してみましょう。

レイアウトを縦書きにしよう

同人小説のレイアウトでよく用いられるのが縦書きですよね。Wordの書式を縦書きにするには、レイアウトタブの「文字列の方向」から設定します。 文字列の方向から縦書きを設定

縦書きに設定したあと、自動的に用紙が横向きになってしまうことがあります。その場合、レイアウトタブの「印刷の向き」から用紙を縦に変更しておきましょう。 印刷の向きを縦に設定する

フォントのサイズを決めよう

同人小説の文庫本を印刷する場合、フォントのサイズの目安は8~9ptと考えましょう。10pt以上になると幼く見えるため、全体的にしまりがなくなります。 フォントサイズを選ぶ

フォントの好みは人それぞれですが、Wordに最初からインストールされているフォントのなかでは游明朝を使う人が多いようです。

フォントの設定は、ホームタブのフォントとフォントサイズを選ぶ欄から行います。

縦横の文字数や行数を整えよう

縦書きの設定にしたまま書き進めても問題ありませんが、同人小説の見せ方にこだわる場合は行数や行間の設定も気になるところでしょう。

例えば大手出版社のライトノベルであれば、42文字×17行などの体裁をとっています。見本としている作品があれば、参考にするのもよいですね。

Wordで文字数や行数を変更するには、余白調節を行ったタブの左側にある「文字数と行数」タブから行います。

最初は「標準の文字数を使う」になっているので、「文字数と行数を指定する」を選んでから、好みの文字数と行数を設定しましょう。 好みの文字数と行数を設定する


文庫同人誌の見た目を整えるための基本・応用テクニック

文庫同人誌の見た目を整えるための基本・応用テクニック 同人小説の本文を書くだけなら、ここまでの設定だけでも十分に対応できます。でもせっかく小説メインの同人誌を作るなら、もっと細かい部分にもこだわりたいですよね。

様々な同人小説の本で使われているテクニックを基本から応用までご紹介します。

ノンブル(ページ番号)を挿入しよう

ページ数の多い同人小説ほど、読者が迷わないためのノンブル(ページ番号)はぜひ各ページに入れたいですよね。

ノンブルの設定は、挿入タブの「ページ番号」の箇所から行います。通常は下部の中央や外側などを指定することが多いでしょう。 ノンブルの設定

文庫本のページ設定の場合、さらに次のような応用が必要となることがあります。

  • 奇数ページと偶数ページの設定を変える
  • ノンブルの位置を微調整する
  • 開始番号を変更する



たとえば下側のノンブルを左右対称かつ外側に配置する場合、奇数ページと偶数ページは設定を変えなくてはなりません。

その場合、まず挿入したノンブルをダブルクリックして、ヘッダーとフッターを開きましょう。

ヘッダーとフッタータブの「奇数/偶数ページ別指定」にチェックを入れれば、奇数ページと偶数ページそれぞれでノンブルの位置を設定することができます。 奇数偶数ページ別指定

ノンブルの位置を上下に微調整する場合も、同じくヘッダーとフッタータブを開きます。上からのヘッダー位置と下からのフッター位置があるので、本文の位置と照らし合わせながらノンブルの高さを調整しましょう。 ノンブルの位置を上下に調整

同人小説の体裁として、目次にはノンブルを入れないなど、開始ページを調整したいこともあるでしょう。その場合、まずは挿入タブの「ページ番号」から「ページ番号の書式設定」を選びます。 ページ番号の書式設定

連続番号の項目の「開始番号」を変えれば、ノンブルが始まるページを調整することが出来ます。なお番号書式を変更すれば、漢数字(一、二、三)やローマ数字(i、ii、iii)をノンブルにすることも可能です。 ノンブルが始まるページを調整

好みのフォントを設定しよう

最初からインストールされているフォントだと満足できない場合、フリーフォントなどを新たにWordに組み込むことも出来ます。

同人小説でよく使われるフリーフォントとしては、源暎こぶり明朝などが知られています。

フォントを組み込む手順は、以下の通りです。

  1. Webページなどからフォントのデータ(zip形式)をダウンロードしましょう
  2. zip形式のフォルダを右クリックして、「展開」を選んでデータを解凍しましょう
  3. フォントを右クリックして、「インストール」を選びましょう
  4. プログラムがコンピューターに変更を加えることを許可するかを尋ねられますので、フォントのダウンロード元が信頼できるなら「はい」を選びましょう
  5. Wordを立ち上げ直せば、新しいフォントが使えるようになります



数字が寝てしまうのを防ぐには?

縦書きの書式でやっかいなのが、数字の扱いです。同人小説の中で算用数字を使っている場合、文中で数字が寝てしまうと見た目が悪くなってしまいます。

そこで活用したいのが「縦中横」というWordの設定です。ホームタブをまず選んで、Aが横に広がったようなマークの拡張書式にカーソルを合わせましょう。 拡張書式

縦中横とは、選んだテキストだけを横書きに変更する設定のことです。算用数字をあらかじめ選んでから縦中横にすることで、数字だけが文中で寝てしまっている状態を防ぐことが出来ます。 縦中横の設定

二段組みにチャレンジ

同人小説の中でも特に文字数が多い作品で好まれるのが二段組みの構成です。 1段組みと2段組みの比較

Wordで二段組みを設定するのはカンタン。レイアウトタブから「段組み」を選んで「2段」にするだけです。 2段組みの設定

あとから段組みを変更することも可能なので、1段と2段のレイアウトを見比べてから決めてもいいですね。

1文字下げをラクにしたいなら?

「段落が変わったときはカギカッコから始まる文頭以外は1文字下げる」という日本語のルールがあります。

しかし同人小説の作品には適用されていないことがしばしばあります。書きながら修正していくことが多い同人小説だと、一字下げのルールに合わせるのが手間だからです。

もし同人小説で1字下げを適用させたいなら、どうすればよいのでしょうか?

Wordでは「字下げ」という設定がありますが、カギカッコまで一文字下げてしまうのが難点です。

おすすめはWordのマクロを使って自動的に1字下げを行うように設定する方法です。応用テクニックとして、活用できる人はぜひ試してみて下さいね。

具体的な操作方法としてはAltキーとF11キーを同時に押して、Microsoft Visual Basicを開きましょう。 Microsoft Visual Basicを開く

一番上の「Normal」を右クリックしたあと、「挿入」を選び、「標準モジュール」を選択します。「標準モジュール」の「Module1」をクリックしたら、下記のコードを貼り付け、保存しましょう。 コードを貼り付ける

Sub 自動インデント() Dim i As Long Dim fsnormal As Single, fsfirst As Single '標準のフォントサイズを取得 fsnormal = ActiveDocument.Styles(wdStyleNormal).Font.Size 'すべての段落について処理 For i = 1 To ActiveDocument.Paragraphs.Count '最初の文字が"「"のときは字下げしない 'これ以外は標準のフォントサイズ分、字下げ If ActiveDocument.Paragraphs(i).Range.Characters(1) = "「" Then fsfirst = 0 Else fsfirst = fsnormal End If ActiveDocument.Paragraphs(i).Range.Select With Selection.ParagraphFormat .LeftIndent = 0 .FirstLineIndent = fsfirst End With Next i End Sub
出典:You Look Too Cool



実行するときは、表示タブの「マクロ」から「マクロの表示」を選ぶと、「自動インデント」と表示されるので、実行ボタンをクリックすれば全文に適用されます。 マクロを実行する


出来上がりをチェックしよう:PDF出力するときのポイント

出来上がりをチェックしよう:PDF出力するときのポイント 同人小説をすべて書き終えたら、いよいよ印刷会社に入稿するための出力です。ほとんどの印刷会社の場合、入稿形式はPDFになるでしょう。

WordからどのようにPDF出力をすればいいのか、注意点も合わせてまとめました!

PDF出力時はフォントを埋め込もう

同人小説の原稿をWordからPDF出力するためには、ファイルタブから「名前を付けて保存」するときに、PDF形式を選んで保存します。 PDF形式を選んで保存

ただし、そのまま出力する前にもうひと手間加えておく必要があります。

保存前に「その他のオプション」を押してから、「ツール」の「保存オプション」を開きましょう。 保存オプションを開く

保存オプションを開くと、下から二番目に「ファイルにフォントを埋め込む」という項目があります。Wordに最初からインストールされているフォント以外を使った場合は、必ずチェックを入れておきましょう。 ファイルにフォントを埋め込む

もしチェックを忘れていると、印刷所でフォントに対応できずにせっかくの同人小説が一部読めなくなるなどのトラブルが生じる可能性があります。

せっかくの同人小説がきちんと思い通りの同人誌に仕上がるように、フォントの埋め込みは忘れずに行いましょう。

右綴じ設定で見開きを確認しよう

出力したPDFを印刷所に出す前に、右綴じでの見開きを確認しておくと同人誌の落丁などのリスクを減らすことが出来ます。

右綴じでの表示をチェックするにはPDFビューアーの設定を変更する必要があります。

Adobe Acrobat Readerであれば、表示タブを選んでから「ページ表示」をし、「見開きページ表示」を行いましょう。

「見開きページ表示で表紙を表示」にもチェックを入れておくと、表紙も合わせて確認することができます。 PDFの見開きページ表示

そのままでは左綴じなので、同人小説のページを正しくチェックするためには右綴じの表示に変える必要がありますね。

Acrobat Readerの場合は、編集タブから「環境設定」を選んでから、「言語」の「デフォルトの読み上げ方向」を「右から左へ」に変更しましょう。 デフォルトの読み上げ方向を右から左へ

その他のPDF ビューアーを使っている場合は、右綴じ表示の方法をヘルプなどで検索してみてくださいね。


まとめ

同人小説の本を文庫で出す際のWordの設定方法について、くわしく解説してきました。

ひとつひとつの作業は面倒に感じられるかもしれませんが、今回の記事を参考にしながらぜひ実際に手を動かしながら覚えていきましょう。

同人小説用の自分用フォーマットを作っていったん保存しておけば、これから先同じように同人小説を書くときに微調整だけで原稿を作ることが出来ます。

印刷会社によってはWordのテンプレートを用意しているところもあるので、テンプレートをもとに自分なりに手を加えてみるのもよいでしょう。

せっかくの作品をより魅力的な装丁で印刷できるように、今回ご紹介したWordのテクニックをうまく活用してくださいね。

小説同人誌の印刷等について知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

同人小説の作り方を印刷~製本まで詳しく解説

この記事を書いた人

原野 真里菜

原野 真里菜

小説書きでツイ廃。一日140字10ツイートできるけど一日1,400字書けないのが不思議。ツイートしてると原稿は進まない。体力づくりのため筋トレを始めた。