「自分の作品をより多くのファンに届けよう!」と同人誌を制作・頒布しようとしたとき、多くの作家の方が悩むのが値段設定です。 オリジナルにせよ二次創作にせよ、同人誌の製本費用やイベント参加費といった必要経費をある程度回収できないと創作活動を続けることができなくなってしまいます。
楽しい同人ライフのために、値段設定は製本ロットや在庫の量など様々な要因を考慮しながらじっくり決めたいところです。 とはいえ、収支計算ばかりに意識が向いてしまって同人活動を楽しめなくなると本末転倒ですよね。
同人誌を頒布するときの適切な値段設定をどうすればいいのか?基本的な考え方や参考となる計算式について解説します。
目次
同人誌の値段設定が難しいのはなぜ?
そもそも同人誌の値段設定に悩む人が多いのはなぜでしょうか? 商業出版とは違い、同人活動は非営利で行うものという前提があります。
非営利の活動で得るお金は、利益の追求ではなく活動を続けるための資金として捉えられます。 非営利という考え方をもとに、頒布する同人誌の価格について考えてみましょう。
価格が高すぎるとどうなる?
まず同人誌の価格が適正よりも高いと、どのような問題が生じるでしょうか? イベントで頒布する場合、参加者の人たちは様々な同人誌を見比べてどの本を買うか決めています。
価格設定が高すぎる場合、予算の余裕がない参加者は本の内容が気に入ったとしても購入を諦めてしまう可能性があります。 また、お目当てのジャンル以外でも好みの絵柄や表紙であれば同人誌を手にとってくれる人もいますが、価格が高めだとためらわれるケースが多いでしょう。
結果的に赤字になってしまう可能性が高くなりますし、なにより自分の作品を喜んでくれるファンとの出会いが減ってしまいます。
価格が低すぎるとどうなる?
同人誌の価格設定が、今度は適正よりも低すぎるとどうなるでしょうか?
あまりに低い価格にしてしまうと、本が売れれば売れるほど赤字が増えてしまうケースがあります。そうなってしまうと経済的にも精神的にも自分にかかる負荷が大きくなってしまいますよね。
同人活動の負担が大きくなって作家の創作意欲が失われてしまうのは、作品を楽しみにしているファンにとっても望ましくありません。 さらに、相場よりもあまりに安い値段設定で同人誌を頒布してしまうと、同じジャンルや規格の本を出展している他サークルの迷惑になる可能性があります。
採算を度外視した価格での頒布はやめておくほうが賢明です。
利益よりも楽しむことを大事にしよう
同人誌の値段設定には明確なルールはありませんので、作家側が自由に値段を決めることができます。 ただし、創作活動を楽しんで続けるためには、「作家とファンが互いに気持ちよくやりとりが出来る価格」を意識して値段設定をするのがおすすめです。
そのためにも、失敗することが少ない同人誌の価格算出方法のパターンについて事前にチェックしておくと安心ですね。
同人誌頒布における配慮と値段設定
同人活動を続けていくと、状況に応じた配慮ができると望ましいシチュエーションに出くわすことがあるでしょう。 うまく配慮をするポイントがわかると、同人仲間との交流もよりスムーズになるため、創作活動がもっと楽しくなります。
同人誌の値段設定のときに意識しておきたい配慮のポイントについて、くわしく説明します。
二次創作なら原作に配慮した価格を心がけよう
同人活動のなかでも二次創作を行っている場合、原作に対する配慮は不可欠です。 著作権のグレーゾーンである二次創作の同人誌頒布は、ファン活動の一貫として原作サイドが黙認しているからこそ成り立っています。
もし二次創作本の頒布で経費以上の利益を大幅に得ていたら、原作者の立場からその活動を許容できなくなる可能性がありますよね。 好きなジャンルの創作を続けていくためにも、個人の活動が差し止めになるようなリスクはできる限り避けたいものです。
二次創作の本を頒布する場合、価格を高くしすぎるとトラブルになりやすいため。値付けは慎重に行いましょう。
端数のない値段設定にしよう
同人誌の値段設定で意識しておきたいのが、参加者の買いやすさです。 イベントに参加する人の大半が、数多くのブースを回りたいと考えています、そのため、お釣りのやりとりで余計な時間を割きたくないと考える傾向があります。
サークル側からしても、細かいお金のやりとりが発生すると計算が大変ですよね。 本の価格は、端数が出ないように100円単位にしておくのがマナーとして好ましいと言えるでしょう。
同人誌の値段設定の参考にできる3つの考え方
同人誌の値段を決めるときに、多くの同人作家が価格の目安にする考え方が3通りあります。
- イベントの相場を参考にする
- 本のページ数とサイズを基準にする
- 実際にかかった費用から算出する
なかには全てのパターンで価格の目安を計算してみて、同人誌の値段を中間くらいの額に決めるという人もいます。 同人誌の値段設定の参考材料となる3つの考え方について、具体的な計算方法と合わせて解説します。
1:「相場」を意識する
同人誌の値段設定をする際、同じイベントに出展する他の作家の価格帯を目安にすることがあります。 特にある程度規模が大きなイベントであれば、各種SNSでお品書きを告知している作家がたくさんいます。
執筆ジャンルが同じで、かつ本のサイズやページ数などの規格が近い本の情報が何点か集めておけば、価格の相場が見えてきます。 イベントの相場と近い値段設定での頒布なら他ブースと余計なトラブルを防ぐことができるので、安心して出展できますね。
2:ページ数とサイズから算出する
他の出展ブースの情報がつかめない場合、同人誌のページ数やサイズから大体の金額目安を決めることができます。
同人誌の値段設定に使われることが多い計算式は次のとおりです。
<表紙フルカラー・本文モノクロの場合>
本のサイズ | 基本の算定式 | 規格に応じた価格調整 |
---|---|---|
B5 | ページ数×10+100円(カラー表紙印刷費) | そのままの額を目安とする |
A5 | ページ数×10+100円(カラー表紙印刷費) | 0.8を掛けた額を目安とする |
文庫・新書 | ページ数×10+100円(カラー表紙印刷費) | 0.5か0.6を掛けた額を目安とする |
<表紙・本文フルカラーの場合>
本のサイズ | 基本の算定式 | 規格に応じた価格調整 |
---|---|---|
B5 | ページ数×20~30円 | そのままの額を目安とする |
A5 | ページ数×20~30円 | 0.8を掛けた額を目安とする |
文庫・新書 | フルカラーにすることが少ないため割愛 | - |
これらの計算式では、用紙サイズが小さくなると同じ内容でも本のページ数が増えることから、より多くの人に届きやすい価格に調整するため、0.8などを掛けています。 もし100円以下の端数が出た場合は、切り上げか切り捨てを行って100円単位の値段設定にするとよいでしょう。
3:実費をもとに計算する
もう一つの方法が、、実際にかかった費用をもとにした計算方法です。
同人誌の入稿スケジュールや特殊加工の内容によっては、通常の製本よりも制作費が割高になることがあります。 そういった場合にこれまでの算出方法で値段設定をすると、トータル収支が大赤字になりかねません。
実費をもとに計算する場合、7~8割の本が売れたらプラスマイナスゼロ、になる価格設定が目安になります。 たとえば、100部印刷して制作費が5万円だと仮定してみましょう。同人誌の値段設定の目安は次の計算で出すことができます。
50,000円÷80=625円
上記のケースであれば、1冊あたり600円か700円での頒布を検討することになります。 イベントの相場を考慮する必要はありますが、場合によっては本の輸送代や無料配布冊子などの必要経費分を印刷代に上乗せしてから算出してもよいでしょう。
まとめ
今回ご紹介した同人誌の値段設定の考え方や計算式はあくまでも一例であり、どれが正解ということもありません。 何より大事なのは、あなた自身が同人活動を無理なく続けられる環境を保つこと。
せっかくのイベント出展を心ゆくまで満喫できるように、無理のない値段設定を心がけましょう。 今回の内容を参考に、ぜひ充実した創作活動を楽しんで下さいね。
同人誌の制作にかかる費用について詳しく知りたいという方はこちらの記事を参考にしてください。
同人誌の制作や頒布費用はどれくらいかかる?